何もしない生活が一か月続いた、空気も徐々に夏の匂いに変わり始めていた。本を読んで、昔観た映画をDVDで見たり、何かしたくなる瞬間を待ち続けたが結局一か月過ぎてしまった。ほとんど、家とコンビニとレンタルショップに行くだけでほとんど誰とも喋っていない。久しぶりに電車に乗って出かけようと、着替えようとした時にそれに気づいた。胸に少しだが、しこりみたいな違和感を感じた。普段なら気にしないほどのことだが、何か心にざわざわした感覚があったので、念のため近くの病院を訪れた。検査の結果は、なんとなくの予感があたっていた。命には別条はないが、右側を切除しないといけないと告げられた。結果を聞いたときは、他人のことを聞かされたようであまり驚きを感じなかったが、家に帰り夜になると急激な刹那感に襲われた。何もかも失った。本当に何もかも。自分自身も。