中学生の頃、浜田省吾が大好きだった。家では借金問題でいろんな人が深刻な顔をしてやってきた。親としては子供に内緒にしているつもりだろうが、小さな木造二階建ての子供部屋には当然、大人たちのいろんな声が聞こえてきた。なんとなく、なんとなくだが、いい方向ではないのは分かっていた。日本の学校では、校内暴力が当たり前だった1980年前後、質流れで買ってもらったパラボラアンテナがついたラジカセで聞いた曲、「路地裏の少年」口づさめば悲しい歌ばかり確かに、ついでに父親が危篤になり、そんな感じだ。世の中はバブルに向かってるのに。「砕かれて手のひらから落ちて」「初めて知る、行き止まりの路地裏で」たまたま電話に出ると、激しい取り立ての電話もあった。「俺は見つけたい金で買えないものを」その通り、とは分かってるのだが、人生、難しい。当たり前のように蟻地獄はそこにあり、勝者敗者の間でじっと仕掛けられているのだ。それでも、あの頃は良かった。すごく老人じみた台詞だ。でも、その通リだ。遠くへ 遠くへスクリーンのヒーローを夢見ていた。今思い起すと、恥ずかしい。結局、今、エピローグは俺一人。そんなこと言わずに「イッツソーイージー走り出せよ」酔っ払うとくちづさんでしまう、どうでもいい話だ、今となっては。